高い調湿機能とデザイン性が評価

エコカラットのすぐれた調湿機能とデザイン性が評価され、国宝・高松塚古墳壁画の修復施設内壁に採用されました。

採用にいたった理由を修復施設建設に携わった山下設計・芝本敏彦氏がレポートします。

修理事業の経緯から今後の評価

1.修理事業の経緯と周辺環境

高松塚古墳壁画は、1972年3月に発見されて以来、色鮮やかな壁画を後世に伝えるために、壁画の修理と現地保存の努力が続けられてきた、と報じられていた。

しかし、近年の石室内の温度上昇や、100%に近い高湿度の条件下で、カビやダニが発生し、壁画の状態を維持することが限界にきており、石室を古墳から取り出し、壁画と石室石材を保存・修理することになり、その修理施設の設計・監理を委託された。

修理施設の設計開始に当たり、積算を含む基本および実施設計期間2ヵ月、工事期間7ヵ月、修理開始時期2007年3月と短期でのスケジュールが示された。

また、建物の使用期限は、修理期間である10年程度と定められたが、建設地は石板の移動距離が考慮され、古墳近くの風致地区内の国営飛鳥歴史公園内と指定された。

建物外観には、いぶし瓦仕上げの4.5寸勾配屋根の採用など、既存の公園施設との厳格な調和が求められた。

2.建物構造、建物構成

構造は、防犯・防盗、気密性確保、恒温・恒湿の維持から、躯体ボリュームを蓄熱体として活用できるRC造外断熱が好ましいと考えられた。

しかし、竣工後、すぐに石材を搬入する工程が求められた。

これでは、RCの水分を蒸発させ除去する「からし期間」が確保できないため、他の構造も比較の上、鉄骨造を採用した。

原則として24時間空調であるが、落雷時、メンテナンス停電時などの空調停止時における室内の温度・湿度環境の維持を図るため、修理作業室の外側、外壁の内側にもう一枚の断熱壁を設けることとした。

この部分と、床下ピット部分、天井内の空間を"外周空間"と位置づけ、修理作業室内の空気のリターンチャンバーとして、作業室内とほぼ同じ環境にすることにより、空調運転時の外気からの負荷に対して、安定した室内環境を維持する仕組みとした。

空調停止時には"外周空間"が緩衝ゾーンとして働き、修理作業室の温度・湿度維持を長時間にわたり行えるようにした。

天井照明器具の管球交換、建物自体のメンテナンスは、すべてこの外周空間から行えるようにし、石材の固定された修理作業室のセキュリティを高める工夫をした。

また、作業期間中、見学したいとの市民のニーズにも答えられるように、作業室に隣接して見学通路が設けられている。

3.修理作業で求められる機能

修理作業室の環境は、空調運転時に夏季、冬季とも石材にふさわしい温度・湿度を維持できるように計画された。

そのために、修理作業室の外気に面する壁面には開口部を設けず、出入り口は、作業者は事務室、準備室を経由しての入退館、石材は、洗浄設備を持つ前室を経由しての搬出入として、外気負荷の影響が最小限になるようにした。

4.比較検討をした内装素材

室内は、空調によって温度・湿度とも一定に保たれているが、室内で人間の作業が発生する今回の用途では、人体から発散される水蒸気にレスポンスが良く、吸収・放出で対応する調湿性を持つ仕上げ材を用いることとした。

仕上げ材を比較検討したポイントとして、下記のポイントが挙げられる。

吸放湿性能自身の高さ、経年性能劣化がないこと(吸放湿は、半永久的に繰り返すことになるため、経年の性能劣化がないことが必須と考えた)、停電時での吸放湿性能の維持(落雷時、メンテナンス停電時にも、吸放湿性能が維持される)、意匠性(修理作業室での作業者の居住環境向上のために)、メンテナンス性(汚れにくく、耐久性が高い)など。

実際、塗材(珪藻土など)、シート(有機繊維含有シート)など数ある吸放湿性能を持つ建材を比較する中、吸放湿性能の能力の高さ、経年劣化がない、コストパフォーマンス、意匠性の高さから、「エコカラット」の採用に至った。

施工性の面からは、気密性の問題があって、修理作業室を囲っている壁下地となるクリーンパネルにはタイルを直接張ることができないために、その上からタイル用の下地を形成することにした。

パネル表面にケイカル板を全面接着の上、反りの発生を防ぐために、ブラインドリベットをスチールパネルの収縮の影響を受けない配置でかしめて下地とし、その上から「エコカラット」を専用剤で接着張りとした。

デザイン的には、無機的なクリーンパネルの表面を、桟木の必要な2mの高さまで覆うことによって、「エコカラット」の凹凸のある表情が、無窓の居室で緻密な作業する方の閉塞感を和らげる方向へ導くことができたのではないかと考えている。

また、淡い色のバリエーションを豊富に揃えていたことも、作業者の居住環境向上に寄与できるだろうし、セラミック素材のため、防汚性、耐久性も他の素材と比較した場合に、期待できると考えた。

「エコカラット」により、調湿性を必要とする場合のクリーンルームにおいて、素材選定の際、既成の"調湿機能"という軸にプラスして、"意匠"という軸で素材を判断することができた。

5.今後の評価

石の搬入は順調に完了したとメディアの情報でうかがい知るが、これから約10年、修理施設において作業が続けられ、修理施設が石材を外界の環境から守り続け、修理作業が無事終了することを願っている。

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